統合失調症について
統合失調症は、脳内の伝達を統合する機能が失われている病気です。
人の思考や感情(喜び、悲しみ、怒り、楽しみなど)は、脳内のネットワークによって表現されています。このネットワークが何らかの原因によって過敏に働いてしまうと、脳が対応できずに、うまく思考や感情を表すことができなくなってしまいます。感情や思考などの精神機能を伝達するネットワークは、脳内のあらゆる場所に張り巡らされています。ネットワークがうまく機能していないと、実在しない人が見えるなどの幻覚が現れたり、周囲から悪口を言われているなどの幻聴が聞こえてきたりと、様々な症状が現れます。
主な症状
統合失調症は症状によって『陽性症状』『陰性症状』『認知機能障がい』の3つに分けられます。
陽性症状とは
統合失調症の中でも代表的な症状である幻覚症状をはじめ、妄想や自我意識の障がい、思考障がい、行動障がいといった症状に分けられます。
幻覚症状
幻覚は実際にはあるはずのない物を、視覚・臭覚・聴覚・触覚など様々な感覚で感じます。最も多いのは、その場にいない人の声が聞こえる幻聴です。自分に対する悪口、陰口、噂話や命令などが聞こえてきます。他の人に見えないものが見えたり、普通なら感じることのない臭いや味などを感じたりするなど、様々な症状が現れます。
妄想
誰かに見はられているような感覚や、周囲に影口や悪口を言われていると信じ込んでしまうなど、非現実的な思い込みをしてしまうこともあります。
自我意識の障がい
自分の考えや行動が誰かに支配されている、人に自分の思考を知られている、自分は誰かに操られているのではないかと感じるようになります。自分と周りの世界との境目が、あいまいになって周囲からの影響を受けやすくなります。
思考障がい
思考がまとまらずに会話中に全く別の話題へ切り替わったり、つじつまが合わない話をしたりします。ひどくなると会話中に突然、何も言葉が出なくなってしまったり、話している内容が支離滅裂になったりして、周囲から理解されにくい状態になります。
行動異常
突然大声で叫ぶなど激しい精神運動興奮状態になる、あるいは周囲からの刺激に全く反応がない状態になることがあります。意味のない言葉を繰り返したり、芝居がかった挨拶や妙な身振り、受動的に摂らされた姿勢のまま保とうとするカタレプシーなどが起こります。
陰性症状とは
陰性症状は、陽性症状が出た後に現れます。陰性症状とは主に、『感情の鈍麻』『意欲の減退』『思考の低下』『対人コミュニケーションの支障』に分けられます。
感情の鈍麻、平板化
感情が乏しくなり、人と目線を合わせなくなります。他の人の気持ちに共感したりすることができずに、孤立してしまいます。外の世界への関心や興味なども消失します。
意欲の減退
何か目的を持って行動をしたり、根気強く何かを継続し続けるという意欲が乏しくなります。集中力が低下して、学校の勉強や仕事に対する意欲や気力がなくなってしまいます。周囲への興味や関心も薄れていきます。
思考の低下
思考が低下していき、人と会話をする機会が少なくなっていきます。周囲の人が話しかけても、そっけない態度をとったり短い返事で済ませたり返事をしなくなってしまいます。
対人コミュニケーションの支障
人との関わりを避けがちになります。自分の部屋に引きこもりがちになり、一日のほとんどを何もせずぼーっと過ごすなど、社会性が乏しく自閉的になっていきます。
認知機能障がいとは
記憶や思考、理解、学習、言語、判断などの認知する能力が統合失調症により低下・支障をきたす状態です。『選択的注意の低下』『比較照合の低下』『概念形成の低下』に分けられます。
選択的注意の低下
テレビやスマートフォン、周囲の人からの情報や刺激に対して、必要なものだけに注意を注ぐことができなくなります。例えば人と会話をしている最中に、周りの動きや音に気を取られて集中できずに落ち着かなくなってしまうなどの症状が現れます。
比較照合の低下
情報や刺激に対して、過去の記憶と適切に照合することができない状態です。例えばある人物が持っているものを、他の人が同じものを持っているだけで二人を同一人物だと思い込んでしまうことが起こります。詳細な部分にこだわりが強くて、全体をとらえることができなかったり、相手の言葉の裏にある意味や比喩を理解できなかったりするなどの症状が見られます。
概念形成の低下
物事や情報をグループに分類する処理ができず、過去の経験や体験に基づいた行動がとれなくなります。例えば、衣類を分類してそれぞれにタンスへしまう、箱を大きさ別に分けて積み上げるなどの動作ができなくなります。
当院で行う治療
薬物療法
当院では、症状や体質に合わせて適切なお薬の処方を行い、症状の改善を図っていきます。
統合失調症の治療では、抗精神病薬と呼ばれるお薬を処方いたします。この薬は、幻覚症状を抑えて、不安や不眠を解消する効果が期待できるほか、感情や意欲低下を元に戻す精神賦活作用があります。副作用も少なく、治療効果の高いお薬です。治療の開始が遅れれば遅れるほど、統合失調症の症状が慢性化してしまう傾向にあります。なるべく早めに医療機関を受診しましょう。
その他の治療法
- 精神療法
- 幻覚や妄想の症状改善
- 認知行動療法